やがてまもなく、どろぼうたちは出て来ました。さっきのかしらが、また、
「閉まれ、ごま。」
と、さけびました。戸はすうーっと閉まってしまいました。そして岩も、もとの岩になってしまいました。どろぼうたちはどこかへ去ってしまいました。
 アリ・ババは木からおりました。そして、さっきどろぼうのかしらが言った、ふしぎな言葉《ことば》をおぼえていたものですから、岩の上へのぼって、
「開け、ごま。」と、どなってみました。
 そうすると、やっぱり岩がわれて、さっきの戸が開きました。アリ・ババは中へ入って行きました。その中は大きなほら穴でした。りっぱな宝物《たからもの》や、金貨《きんか》や銀貨をつめこんだ大きな袋《ふくろ》が、すみからすみまで、ぎっしりとつみ重ねてありました。これだけのものをあつめるには、まあ何年かかったことだろうと、アリ・ババは思いました。そしておそるおそる、金貨をつめこんだ袋ばかりを六つ取り出しました。そして手早く三びきのろばにつんで、その上に金貨の袋がかくれるほど、切った木をつみ重ねました。それから、
「閉まれ、ごま。」と、大きく言いました。そうすると戸はやっぱり閉まって、岩には
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