か、知っておいた方がよござんすよ。」
 そう言って、はんたいしました。そして、
「私はこれからカシム兄さんのところへ行って、ます[#「ます」に傍点]をかりて来ましょう。そのますで、私がこの金貨をはかっている間に、お前さんが穴を掘ったらいいじゃありませんか。」
と、言いました。そして、おかみさんは、カシムの家へ出かけて行きました。
 カシムの家では、ちょうどカシムがるすでした。それでカシムのおかみさんに、
「姉《ねえ》さん。すみませんが、ますをかしてください。」とたのみました。
「すぐに返しに来るなら、かしてあげてもよござんす。」
 カシムのおかみさんは、ぶあいそうな顔をしてこう答えました。そして、どうしてアリ・ババの家でますがいるのか、ふしぎに思ったものですから、ますの底《そこ》に少しばかりラード(ぶたの油)をぬって、かしてくれました。こうしておけば、このますで何をはかったにしろ、底にくっついて返ってくるにちがいないと考えついたからでした。
 アリ・ババのおかみさんは、ますをかりて、大いそぎで帰って来ました。そして金貨をはかってしまうと、また大いそぎで返しに行きました。けれども、ますの底に、一枚の金貨がくっついていたということには、ちっとも気がつきませんでした。
「まあ、なんてことだろう。アリ・ババの家では、あんまりお金がどっさり入ったので、かぞえきれないで、ますではかったんだね。」
 カシムのおかみさんは、金貨を見つけて、いまいましそうにどなりました。
 カシムが帰って来て、この話を聞いて、もっともっとおこりました。そしてすぐに、アリ・ババの家へ出かけて行きました。
「何だってお前はかくすんだね。私の家内《かない》は、お前がかぞえきれないほどたくさんの金貨を手に入れたので、ますではかったってことを、ちゃあんとかぎつけてるんだよ。さあどうして、そんなにたくさんのお金をこしらえたのか、はくじょうしろ。」と、アリ・ババにしかるように申しました。
 アリ・ババは、せっかくかくしていたことを知られてしまったので、がっかりしました。仕方がないので、兄さんに何もかも話してしまいました。そして、
「きっと、だれにも言わないでくださいよ。」と、言いながら、あの、「開け、ごま。」「閉まれ、ごま。」という言葉を、教えてしまいました。
 カシムは、自分の家へ帰って来て、十二ひきのろばを馬やから引き出しました。そして、それを引いて森の岩をさして出かけました。岩の前まで来た時、ろばをそばの木につないでおいて、
「開け、ごま。」
と、言いました。すぐに岩がわれて、あのふしぎな戸が開きました。
 もともとカシムは、大へんなよくばりやでした。それで、どろぼうたちの宝物を見て、とび上るほどよろこびました。そして、金貨の入っている大きそうな袋をえらんで、それを二十四も、戸のところまで引きずり出して来ました。そして、
「開け、大麦。」と、さけびました。
 まあ、どうしたのでしょう、戸は閉まったままでした。カシムはあわてて、
「開け、あずき。」と、言ってみました。けれども、やっぱり戸は開きませんでした。それからはもうますますあわてて、
「開け、小麦。」だの、「開け、あわ。」だのと、おぼえているかぎりの、穀物《こくもつ》の名を言ってみましたけれど、やっぱり、だめでした。戸は一寸も開きませんでした。カシムは「ごま」をすっかり忘れていたのでした。
 ちょうどその時、どろぼうたちが馬に乗って帰って来ました。そして、かしらが、
「開け、ごま。」
と、さけんで、ほら穴の中へ入って来ました。そして、カシムと、引きずり出した金貨の袋とを見つけてしまいました。
 どろぼうたちは、自分たちの、人にかくしていたお倉《くら》を見つけられたので、大へん腹を立てました。そして、いきなりカシムをつかまえて、切り殺《ころ》して、からだの肉を切りきざんでしまいました。そして、ここへだれでも金貨をぬすみに来ないように、カシムの肉のきれを一つ一つ、ほら穴の中へつるしました。
 カシムのおかみさんは、夜になってもカシムが帰って来ないので、大へん心配しました。そして、アリ・ババの家へ行って、カシムをさがしに行ってくれとたのみました。それでアリ・ババは、あくる朝早く、三びきのろばを引いて、ほら穴さして出かけました。
「開け、ごま。」そう言ってから、アリ・ババは中へ入って行きました。しかし入るとすぐに、おそれてちぢみ上ってしまいました。兄さんが殺されて、切りきざまれていましたから。アリ・ババは、ふるえながら、兄さんの切りきざまれた肉を、一きれずつていねいによせあつめて、二ひきのろばにつみました。そして、あとの一ぴきは強い小さな黒馬でしたが、これには金貨の袋を二つつみました。
 アリ・ババは町へ帰って来て、まずカ
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