をしていましたが、ほんとうは、アフリカのまほう[#「まほう」に傍点]使でした。
「私の名はアラジンです。」
 アラジンは、いったい、このおじいさんはだれだろうと思いながら、こう答えました。
「それから、お前のお父さんの名は。」また、まほう使が聞きました。
「お父さんの名はムスタフと言って、仕立屋でした。でも、とっくの昔に死にましたよ。」
と、アラジンは答えました。すると、この悪者のまほう使は、
「ああ、それは私の弟だ。お前は、まあ、私の甥《おい》だったんだね。私は、しばらく外国へ行っていた、お前の伯父《おじ》さんなんだよ。」
と言って、いきなりアラジンをだきしめました。そして、
「早く家へ帰って、お母さんに、私が会いに行きますから、と言っておくれ。それから、ほんの少しですが、と言って、これをあげておくれ。」と言って、アラジンの手に、金貨《きんか》を五枚にぎらせました。
 アラジンは、大いそぎで家へ帰って、お母さんに、この伯父さんだという人の話をしました。するとお母さんは、
「そりゃあ、きっと、何かのまちがいだろう。お前に伯父さんなんか、ありゃあしないよ。」と、言いました。
 しかし、お
前へ 次へ
全38ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング