のを持っておいで。」
 アラジンは、やっぱりふるえながら、こう言いました。おそろしいおばけが、やっぱり天じょうからにらみつけていたものですから。が、その時、ランプの家来は、しゅっとけむりを立てて消えてゆきました。けれども、またすぐに、金のお皿《さら》の上に上等のごちそうをのせて、あらわれて来ました。
 この時、アラジンのお母さんは、やっと気がつきました。けれども、このごちそうをたべるのを、大へんこわがりました。そして、すぐにランプを売ってくれと、アラジンにたのみました。あのおばけが、きっと何か悪いことをするにちがいないと考えたものですから。けれどもアラジンは、お母さんのこわがっているのを笑いました。そして、このまほう[#「まほう」に傍点]のランプと、ふしぎな指輪《ゆびわ》の使い方がわかったから、これからは、この二つをうまく使って、くらしむきのたすけにしようと思う、と言いました。
 二人は金のお皿を売って、ほしいと思っていたお金を手に入れました。そして、それをみんな使ってしまった時、アラジンはランプのおばけに、もっと持って来いと言いつけました。こうして、親子は何年も何年も楽しくくらしていました。

 さて、アラジンの住んでいる町にあるお城《しろ》の王さまのお姫《ひめ》さまは、大へん美しい方だということでした。アラジンも、このうわさを聞いていましたので、どうにかしてお姫さまを一度おがみたいと思っていました。それで、いろいろお姫さまをおがむ方法を考えてみましたけれど、どれもこれもみんなだめらしく思われるのでした。なぜかというと、お姫さまは、いつも外へお出ましになる時は、きまったように、深々とベールをかぶっていらっしゃったからであります。けれども、とうとう、ある日、アラジンは王さまの御殿《ごてん》の中へ入ることができました。そして、お姫さまがゆどの[#「ゆどの」に傍点]へおいでになるところを、戸のすきまからのぞいてみました。
 それからアラジンは、お姫さまの美しいお顔が忘れられませんでした。そしてお姫さまがすきですきでたまらなくなりました。お姫さまは夏の夜のあけ方のように美しい方でした。アラジンは家へ帰って来て、お母さんに、
「お母さん、私はとうとうお姫さまを見て来ましたよ。お母さん、私はお姫さまをおよめさんにしたくなりました。お母さん、すぐに王さまのお城へ行って、お姫さまをくださるようにお願《ねが》いしてください。」と言って、せがみました。
 お母さんは、息子のとほうもない望みを聞いて笑いました。そしてまた、アラジンが気ちがいになったのではないかと思って、心配もしました。しかし、アラジンはお母さんが「うん」と言うまではせがみ通しました。
 それで、お母さんは、あくる日、王さまへのおみやげに、あのまほうの果物をナフキンにつつんで、ふしょうぶしょうにお城へ出かけて行きました。お城には、たくさんの人たちがつめかけて、うったえごとを申し出ておりました。お母さんは何だかいじけてしまって、進み出て自分のお願いを申し上げることができませんでした。だれもまた、お母さんに気がつきませんでした。そうして、毎日々々、お城へ出かけて行って、やっと一週間めに王さまのお目にとまりました。王さまは大臣《だいじん》に、
「あの女は何者だな。毎日々々、白いつつみを持って、来てるようだが。」と、おたずねになりました。
 それで大臣は、お母さんに王さまの前へ進むように申しました。お母さんは、少し進んで、地面の上へひれふしてしまいました。
 お母さんは、あんまりおそれ多いので、何も言うことができませんでした。けれども、王さまが大そうおやさしそうなので、やっと勇気《ゆうき》を出して、アラジンにお姫さまをいただきたいとお願いしました。それから、
「これはアラジンが王さまへのささげ物でございます。」と言って、まほうの果物をつつみから出して、さし上げました。
 あたりにいた人々は、こんなりっぱな果物を生れて一度も見たことがなかったものですから、びっくりして声を立てました。果物はいろいろさまざまに光りかがやいて、見ている人たちがまぶしがるほどでした。
 王さまもおおどろきになりました。そして大臣を別のへやへお呼びになって、
「あんなすばらしいささげ物をすることができる男なら、姫をやってもいいと思うが、どうだろうな。」と、ご相談《そうだん》なさいました。
 ところが大臣は、ずっと前から、お姫さまを自分の息子のおよめさんにしたいと思っていたものですから、
「そんなにいそいで約束をあそばないで、もう三月《みつき》ほど、待たせなさいまし。」
と、申し上げました。王さまも、なるほどそうだとお思いになりました。それで、アラジンのお母さんに、もう三月待ったら、姫をやろう、とおっしゃいました。
 
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