うことを知ったからであります。そして、おこって自分のかみの毛を引きむしりながら、
「あいつめ、きっとランプの使い方をさとったのにちがいない。おれは、ランプをとり返す方法を考えつくまでは、いまいましくって、夜もおちおちねむることができない。」
と、どなっていたのでありました。
 それから、やがてまた、しな[#「しな」に傍点]へやって来ました。そしてアラジンの住んでいる町へ来て、すばらしい御殿を見ました。御殿があんまり美しいのと、アラジンがお金持らしいのに腹が立って、息《いき》がとまってしまうほどでした。そこで、まほう使は商人《しょうにん》にばけました。そして、たくさんの銅《どう》で作ったランプを持って、
「ええ、新しいランプを古いランプととりかえてあげます。」
 町から町へ、こう言いながら歩きました。
 この呼び声を聞いて、町の人たちは、ばかげたことだと笑いながらも、めずらしそうにまほう使のそばへたかって来ました。こんなことを言う男は、気ちがいかもしれないと思ったものですから。
 ちょうどこの時、アラジンはかり[#「かり」に傍点]に出て、るすでした。お姫さまはただ一人、大広間のまどによりかかって、外の景色《けしき》をながめていらっしゃいました。町から聞えてくる呼び声が、耳に入ったものですから、さっそくどれいをお呼びになりました。そして、
「あれは何と言っているのか聞いておいで。」と、おっしゃいました。
 すぐにどれいは聞いて帰って来ました。そして、さもさもおかしくてたまらないというふうに笑いながら、
「ずいぶん、へんなおじいさんなのでございますよ。新しいランプを古いランプととりかえてあげます、と申すのでございます。そんなばかげたあきないがございますでしょうかねえ。ほほほ……」と、申し上げたのでございました。
 お姫さまも、これをお聞きになって、大そうお笑いになりました。そして、すみの方のかべにかかっていたランプを、指さしになって、
「そこにずいぶん古ぼけたランプがあるじゃないか、あれを持って行って、そのおじいさんが、ほんとうにとりかえてくれるかどうか、ためしてごらん。」と、おっしゃいました。
 どれいはランプをとりおろして、町へ走って行きました。まほう使は、まほうのランプを両手でしっかり受けとってから、
「どれでも、おすきなのをお持ちください。」
と言って、新しい銅の
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