引くべきですよ。
けい 私は、そうは思いませんね。中国は中国と、生活の上で一番関りの深い国と手を握り合うことでしか独り立ちは出来ませんよ。その国は日本ですよ。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから3字下げ]
けい、出て行く。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
章介 おいおい、お茶の仕度ならいいよ。
けい ええ、でも、お茶くらい淹《い》れますよ。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから3字下げ]
出て行く。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
栄二 (見送って)あの人は、たしか僕より三つくらい下だったけが……。随分ふけてみえるなあ。
章介 あの女のやってきた仕事はお前や俺以上の仕事だ。ふけてみえるのはあの女にとって戦いの勲《いさおし》とでもいうべきものだろう。
栄二 そうのようですね。しかし少々やりすぎたのじゃありませんか。
章介 あの女はそれをしなければならないような地位に置かれて、それをしたのだ。あの女の働きが必要な間は働かせておいて、その働きがあの女に持ってきた結果だけをとがめるわけにはゆかん。
栄二 しか
前へ
次へ
全111ページ中81ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
森本 薫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング