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しず ああ、暖い。ここは随分よく日のあたることね。
けい 今日は奥さま、ご加減がよろしいようでございますね。
しず ええ、店のことも気になるし、起きてみましたよ。どう、家の用事が多くて辛《つら》くない?
けい いいえ、もっとどんどん御用をお出し下すった方がいいくらいですわ。私なんだか遊んでいるようで勿体《もったい》ないと思っています。
しず そんなことはありませんよ。家の方こそ、お前が来てくれてから掃除はゆきとどく、用はどんどん片づく、どんなに喜んでいるかしれないのですよ。でも、あまり無理をしないで辛い時は遠慮なくそういって休みなさい。
けい 辛いなんて、そんなこと決して。私、時々こんな暮しって夢じゃないかと思うくらいでございますわ。朝、目がさめると、ああやっぱりほんとでよかったと思うんです。
しず ふふふ。誰も彼もがお前のように遠慮勝ちの望みを持っていたら、世の中はどんなに穏やかに美しくなるでしょうね。
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章介。
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