訣別に臨んで知己を得たわけですね。
須貝 いや、ほんとだ。
昌允 一度一緒に飲みたかったですね。
須貝 そう言う時もあるでしょう。その時はひとつ、やりましょう。
昌允 楽しみにしておきます。
須貝 お互、腹の底を覗《うかが》うようなことは止めてね。
昌允 う……。
須貝 君、オレンヂ・ジュースにウイスキーを入れたりするのは婦人の為《す》ることだ。止したまえ。酒なら灘の生一本、これがいい。それからウイスキー。
昌允 今度会う迄、練習しときましょう。
須貝 よろしい。そう願いましょう。
昌允 荷物は、あれだけですか。他に残っていませんか。
須貝 残っています。あれは、シャツだの、ハンカチーフだの言うものです。それに季節の洋服と、そう言うものです。後のものはおいときます。
昌允 宿がきまったら、送りましょうか。
須貝 そうしていただくとありがたいですな。しかし捨ててくだすってもいいです。あんまり、役に立つものもないんですから、御ぞんじのとおりですが……。
昌允 まあ、いいです。送ることにしておきましょう。
須貝 感謝に堪えんです。う……煙草を喫《す》ってっても、大丈夫ですか。
昌允 大丈夫
前へ
次へ
全102ページ中90ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
森本 薫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング