1] あら、だって……。あなたはもう子供じゃないわ。
未納 ありがと。とても親切だわ。
須貝 僕は親切でないのか、今日は一《いち》ん日《ち》遊んでやったんだぞ。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] (未納に)何してたの。今日は。
須貝 テニス。或はテニス的大騒ぎ。
未納 大騒ぎじゃないわ。
須貝 大騒ぎさ。テニスなんてのは紳士淑女のやるスポーツだ。君達みたいな小僧のやるもんじゃない。僕は草の半分生えた原っぱで汗をかいただけの話さ。
未納 サイドを変らなかったからでしょう。
須貝 サイド、それもある。がそんなことは末の問題だよ。要するに精神だ。あなたに求めるのは無理だが……。
未納 スポーツマン・スピリッツ。
須貝 何でもいい。そう言うものでもいい。
未納 カウントを忘れたのは、須貝さんが始めよ。
須貝 僕は始めから、カウントなんか、問題にしとらんがね。
未納 嘘言ってるわ。やっぱり勝った方がよかったんでしょ。だって、今日は妾が勝ったんだもの仕方がないわ。
須貝 えい。勝ってやればよかったな。この子はこれから少くとも一月《ひとつき》、これをいうだろうな。僕は、当分君と勝負
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