んなにどきどき、言ってるわ。(胸を抑える)
須貝 どら。(頭を近づける)
諏訪 (頭を突いて)彼方《あっち》へいらっしゃい、彼方へ。
須貝 危い。落っこちたらどうします。落ちて、頭がハチ割れたら。
諏訪 ハチ割れるもんですか、そんな頭が。
須貝 いや、いいです。構いません。どうせ役に立たない頭ですから。(諏訪に並んで坐る)
諏訪 あんまり近くへ寄らないで下さいよ。気味が悪い。
須貝 以前ならそうは被仰らなかった。
諏訪 妾は、謀叛人《むほんにん》には容赦しない方ですよ。これからもずうっと厳しくします。
須貝 ですが直接事を起させたのはあなた御自身なんですよ。
諏訪 藪をつついて蛇を出したと言うわけね。そう言うことと知ったら、早く追い出せばよかったんだわ。自惚《うぬぼ》れないで下さいよ。あなたなんか、なんです。あなたなんか……。
須貝 僕? 僕は……。
諏訪 そうよ。須貝の鼻ったらし小僧。妾はね、あなたを一番怒らせる言葉を探しているのよ。
須貝 何と言われたって、怒りゃァしませんよ。御安心下さい。
諏訪 ああ、苛《い》ら苛《い》らしてくるわ。
須貝 心を静めて下さい。僕は、あなたを怒らせ
前へ 次へ
全102ページ中43ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
森本 薫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング