ですね。
須貝 構わないのかな。
昌允 構わないことはないでしょう。しかしやっています。
未納 第一泳げるの、あなた。
須貝 土佐の生れだからね。
昌允 ああ、それなら、泳げますね。
未納 土佐か、土佐犬か。土佐って何県だったかな。
昌允 知らないのか。
須貝 一寸、失敬。
昌允 まあ、いいじゃありませんか。
須貝 笑っちゃ、いかんですよ。一寸、思いついたことがあるんで。
昌允 ノオトをとるんですか。熱心だな。
須貝 そら笑った。(去る)
昌允 (追かけて)考えといて下さいよ。今の話。
未納 母さん、遅いわね。何処へ廻ったのかしら。
昌允 姉さんに聞かなかったのか。
未納 お兄さんは?
昌允 いや、俺も……。撮影所で与太《よた》ってるんだよ。
未納 早く帰って来るといいのに。
昌允 用があるのか。
未納 (曖昧に)え。ううん、母さん……に……妾、頼んどいたことがあるの。
昌允 なんだ。つまらん。
未納 でも、もう取消しよ。お兄さんには、つまらんことでも、妾にはつまることだわ。
昌允 ふむん。(気を換えて)母さんも遅いが、お前も、割合にやることが遅いな。
未納 どうして。
昌允 須貝さん
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