すから。
須貝 一向、困ってるようにもみえない。
昌允 年下のものを虐《いじ》めるのはお止しなさい。意地の悪い……。
須貝 ところが、僕は僕で、あなたを意地悪だと思ってる。
昌允 そんな莫迦《ばか》な……。しかし、どうしてもと言われるなら、それはそれで構いませんよ。あなたの意志は、尊重します。
須貝 わからないな、僕は、あなたの罠《わな》にかかるのは厭ですよ。
昌允 罠? 何です。それは……。
須貝 と言うのは、つまり……。
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未納。
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未納 (悪戯《いたずら》らしく覗《のぞ》き込んで)もう済んじゃったかな。
昌允 何だ。
未納 (這入って来る)なあんだ、お兄さんか。おやおや、マルチーニお父さんのお株奪っちゃっていいの? 嘆くわよ。(と近づく)
昌允 ウイスキーが入ってるぞ。
未納 ああ(泰然と手を差出す)
昌允 手を洗って来いよ。バイキンみたいな手をしてやがる。
未納 ん、綺麗よ。(注ぐ)
昌允 さんざ、土いじりをして来たんだろう。なんだ、その顔は(未納、顔を外らす)……顔迄泥の条《すじ》がついてら。
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未納、手の甲
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