一杯考えることがあるんですよ。
昌允 も少し自由でいたいっていうわけですね。それだったらあなたは、早く此の家を出た方がいいですよ。
須貝 どう言うわけです、それは。
昌允 僕達の親爺も母親も、あなたが、あの二人の中どっちを選ぶか、興味を持っています。どっちを選ぶかってことだけですよ。
須貝 ――。
昌允 それに、その話は、僕にも多少関係があるものだから……。
[#ここから3字下げ]
間。
[#ここで字下げ終わり]
昌允 成可《なるべ》くなら、未納の方を選んで下さい。
須貝 弱ったな。僕は、まったくそこ迄は考えていなかったものだから……。先生にお世話になったことと、これとは……。
昌允 勿論話は別です。……じゃァ、二人に対しては須貝さんは全然白紙なんですね。どうも失敬しました。僕はまた……。
須貝 いや。そう、はっきり言い切る用意もないわけなんだが……。
昌允 ふん。
須貝 まあその程度ですな。
昌允 どうだか……怪しいな。
須貝 言い切ったところで、信用しやしないんでしょう。
昌允 そうでもないけど……。
須貝 そうでもないでしょう。(二人は顔を見合せる)
昌允 実は……。
須貝 はあ
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