[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]、未納。
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美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] あら、暗いわね、誰もいないのかしら。
未納 母さん!
諏訪 (我に返って)うん。
未納 そこにいたの。
諏訪 (外を見たまま)此処よ。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 御飯、出来てよ。
未納 (二階へ)お父さん、御飯!
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] どうしたの、母さん。
諏訪 いいえ、どうも……。暗くなったわね。(壁をさぐってスイッチを入れる)
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] すっかり暮れてしまったわ。
未納 涼しくなったわね。(窓の傍へ行く)お姉さん、宵の明星よ。緑色をしてるわ。
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美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]、近づいて行く。
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諏訪 あのね、須貝さんね。どっか、行って了ったんだって。
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二人、答えない。
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諏訪 母さん、いけなかったかしら。
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二人、答えない。
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諏訪 母さんは、出て行って貰うって言ったけれど、そのことはあの人には、まだ言ってないのよ。言わない先に自分で出て行ったのよ。でも、やっぱり、母さんの所為《せい》かしら。
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二人、答えない。
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諏訪 そうかもしれない、何故だかわからないけど、やっぱり、あなた達に、あやまらなければならない気がするわ、もしも、母さんが、いけないと思ったら、堪忍《かんにん》して頂戴。母さんは、いくらでもあやまってみたい気がするのよ。
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二人、答えない。
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諏訪 須貝さんは、妾達みんなに、黙って、行って了ったのよ。左様ならも言わないで、何処かへ行って了ったのよ。少し酷《ひど》いと思わない。だけど、その方がほんとによかったかもしれないわね。これからはみんな、以前のようにずっと仲よく暮してゆけるじゃないの、厭なごたごたなんかなくって……。
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美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]、啜り泣き始める。
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未納 お姉さん! お姉さん!
美※[
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