は出来ないからね。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 須貝さんのがっかり仕様《しよう》、大変ですのね。
須貝 ボールをね、丁度、草の生えてる凸凹の辺《あたり》へ打ち込むんですよ。そのくせ自分の方は、例のきれいな所でしょう。サイドは絶対に独占する。こっちは陽に向きっきりで……。
未納 だから草を抜いて、ローラーで……。
須貝 ローラーか。どうでもローラー曳《ひ》かせる気か。
未納 お姉さん、手伝ってくれない?
須貝 お姉さんは、テニスなんかしやしないじゃないか。
未納 ええ。でも手伝ってくれるわね。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 何の話? それ。
須貝 いいんですよ。嘘ですよ。
未納 テニスコートをね、ローラーで固めるの。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] まあ。
未納 いけない?
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] いいえ。そりゃ、いけないことなんか、ないわ。
未納 手伝ってくれる?
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 妾? でも、でも妾。
須貝 そら、みろ。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 妾、力が無いもの。
未納 そう。お姉さん、亜鈴体操しなかった?
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] アレエ?
未納 亜鈴。両方に鉄の塊がついて、握り[#「握り」に傍点]がついて……。
須貝 僕だってしたことないぜ、アレエなんか。
未納 あなたはいいの、男だもの。
須貝 男か。荷牛だと思ってやがる。
未納 あら、そんなこと考えてないわ。荷牛にしては痩《や》せ過ぎてるんだもの。
須貝 なぐるよ。おい。
未納 慍《おこ》らないでよう。
須貝 (美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]に)こうですからね。この子は手に負えんです。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] (笑う)
未納 須貝さん、お姉さんが好きなの?
須貝 (驚いて)なに?
[#ここから3字下げ]
未納、腰に手をあてて、黙って歩き廻る。
[#ここで字下げ終わり]
須貝 驚くべき代物《しろもの》だね、君は。
未納 隠さなくったって、いいわ。妾知ってるのよ。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 未納ちゃん!
未納 (額を押えて)皺なんか慥《こしら》えてみせたって駄
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