鉄風 君が、困るわけは、ないと思うがねえ。須貝は未納じゃ、不足だと……でも……。
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美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]、一寸堅くなる。
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諏訪 そうじゃないの、そうじゃァないんですよ。困ったわね、何う言ったらいいかしら、ただもう、ぼんやり、結婚は厭だって言うの、あの人。
鉄風 ぼんやり厭だって言うと……。
諏訪 厭なことは、はっきりしてるのよ。
鉄風 じゃァ、何だい、そのぼんやりしてるのは……
諏訪 それはね。(荒っぽく)妾にだってわからないわ。そんなに将棋の詰めてみたいに言われたって返答出来ないじゃありませんか。
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鉄風、ぽかんとしている。
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諏訪 (はっとして、美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]に)言って頂戴、正直によ。胡魔化しちゃ厭よ。美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]さん、美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]さん。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 痛いわ、母さん。
諏訪 あなたの好きな人って、須貝さんじゃないの。
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間。
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鉄風 (唸る)――。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] (英雄的に微笑《ほほえ》んで)そうじゃないわ。母さん。
鉄風 (諏訪に話す機会を与えずに)実は……なんだ、未納の奴、須貝と一緒にして欲しいらしいんだ。それで……俺としては……しかしほんとかね、お前それで構わないのか。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] ちっとも構わないわ、お父さん。妾だって賛成だわ、丁度いいじゃありませんの。二人は仲良しだし、ほんとに仲がいいんだから。
鉄風 お前がそう言うから、それに間違いないだろう。それじゃァ、この話は、ちっとも難しいことはないわけだね。
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諏訪、落ちつかない。
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鉄風 (諏訪に)お前だって、別に考はないんだろう。じゃあ、それでいいんだな。後はただ……。
諏訪 このお茶は、すっかり冷えて了ったわ。
鉄風 (美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]に)だけど、俺は順序として、出来ればお前の方からはっきりしておきたいと思ったんだ。母さんがいい
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