に見えない?
鉄風 お腹でも痛かったのか?
未納 (美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]の肩を抱いて)お父さんの莫迦。お姉さん、妾とうとう泣いちゃった。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] ?
未納 勘忍してね。さっき言ったこと。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 何のこと、それ。
未納 やよ、困らしちゃァ。ほら、さっきね、言ったでしょう、いけないこと。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] そうじゃないのよ。そんなことじゃないの。だから……。
未納 あら、じゃァなぜ、泣いたりなんか……。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] (狼狽して)何でもないの。ほんとになんでもないのよ。妾泣いたりなんかしやしないわ。厭! そんなに顔を覗くの(気を換えて)そんな心配して、あなた泣いたの、厭な人ね。(笑う)
未納 そうじゃ、ないの、妾……。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] そう。(がっかりする)そんなら……。
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間。
[#ここで字下げ終わり]
鉄風 (包の中から、菓子を取り出して、頬ばりながら)一向に要領を得んね。(諏訪に)同性愛じゃないか、二人は。
諏訪 厭ですよ、つまらない事言わないで頂戴。
鉄風 少し変だとは思わないかい。
諏訪 少し変なのは、昌さんの方ですわ。
鉄風 あれは、昔からああだ。
諏訪 いいえ、以前はそうでもなかったわ。ずっと前は……。
鉄風 そうじゃなかったって、どうじゃなかったんだ。
諏訪 此の頃、ずうっと、妾達から離れるよう、離れるようにしてるじゃありませんか。
鉄風 そうかねえ。一向俺は気がつかんが。
諏訪 妾は気がついてるわ。美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]さんお茶でもいれない。
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美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]、行きかける。
[#ここで字下げ終わり]
諏訪 ああ、こんなもの、もう要らないでしょう。持ってっといたら如何。それから妾、パンがあったら少し戴こうかしら。
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美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]、グラス、シェーカーなどを持って出て行こうとする。
未納、蹤《つ》いて行こうとする。
[#ここで字下げ終わり]
美※[#「にんべん+予」、第
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