と、我々は、やっつけられどおしですよ。それじゃァ息が吐《つ》けない。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 息つぎには、なりますのね。
須貝 失敬。悪口のつもりじゃないんですよ。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 構いませんの。でも……妾、好きですわ、あの人。あんなに思ったことを、そのままずんずん運んでゆけたらどんなにいいかしら、と思うこともあるんだけど!
須貝 そう言うことが、ありますかなあ。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] ありますわ。でも、やっぱり駄目なんですの。
須貝 性質だから……尤《もっと》も、あんな風になりたいってのは、結局とてもあんな風になれないと言うことかもしれませんね。案外、向うでもあなたのようになってみたい、と思ってるかもしれないが……。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] まさか。
須貝 未納君はどうかしりませんよ。(笑う)そう言ってやったら、張り倒されるかもしれないな。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 妾だって、ちっとも温柔《おとな》しくなんか、ないんですよ。
須貝 いや、まあ、標準ですよ。未納君が活発だとすると、あなたは……。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 鈍感なんですわね。
須貝 こりゃ、いかん。今日は何の日かしらん。婦人との口論、差控うべし、か。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] あら、御免なさい、妾……。
須貝 冗談ですよ。むきになっちゃァいかん。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] (笑う)いやだわ……須貝さん。
須貝 しかし、なんだな……少し工合が悪くなって来て……困るな。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] なんですの。
須貝 いや、別に……なんでもないんだが……未納君、変なこと言いましたね。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] ――
須貝 あんなこと、考えていたのかな。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] さあ。
須貝 今迄、あなたに、そんなこと言ったことが、あるんですか。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] いいえ、そんなこと……。
須貝 少し、きびしく叱っておかないといけませんよ、お姉さん。どうも、あんなことを言われ
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