婚したいんだ、医者か。
あさ子 さあ。
収 はっきりするんだ、法学士の外交官か。
あさ子 ――(笑っている)
収 法学士はいけないな、他人を莫迦にすることしか知らないんだよ。それに医者は、医者は、人を莫迦にしない代りに自分が莫迦になることがあるよ。
あさ子 医学部の人って、遊ぶんじゃない?
収 しらない。医者だね、医者か、やっぱり。そりゃ医学部だって色々あるさ。結局は一人々々引き抜いてみなければ、十把一《じっぱひと》からげにはゆかないと思う。
あさ子 概してよ。
収 概してなんか知るものか。そんな統計って見たことが無い。
あさ子 あんたは、どう思う? 自分と同じ方面の仕事をしている人と、まるで反対の仕事をしている人とどっちがいいと思って、結婚するのは。
収 しらんね。結婚しない間にそう言うことを考えられるのは女だけだろう。
あさ子 あたしのお友達なんか、全然反対の仕事をしてる人と、お互に助け合って行くのが、本当の生活だって言うんだけど。
収 どうだかわからない。薬学をやったものは医者の奥さんになればいいよ。無理がなくて、当り前で、きっと仕合せだろう。
あさ子 あんただったら何《ど》うす
前へ
次へ
全38ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
森本 薫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング