ぐに支度をして宿を飛びだした。
 が、女の家に近づいた時には、それでもまた勘平に言われた言葉が気になった。といって、そのまま引返す気にもなれないので、うじうじしながら、とうとう女の家の軒端《のきば》をくぐってしまった。
 女の方では、そんなこととは知らないから、久しく逢いに来てくれなかった恨みを言うことも忘れて、心《しん》から嬉しそうにしながら、
「久しく見えなんだのは、どこかお悪かったのか。そういえば、お顔の色もようない」と、心配そうに訊ねた。
「なに、そう気に懸けてくれるほどのことでもない」と、小平太は面倒臭そうに言った。彼にはもう当座の嘘を言うのが億劫《おっくう》になっていた。といって、真実《ほんとう》のことも言われなかった。
「だって、心配になりますわ」と、おしおもさすがに言い返した。「見えると言っても見えもせず、たまたま来れば、いやな顔ばかりしていらっしゃるんだものを」
「じゃ、来なければよかったね」と小平太は気短に言った。
 すると、女はすぐに気を変えた。「わたしが悪うござんした。お気合いの悪いところへよけいなことばかりお訊ねして、もう何にも申しますまい」
 こう言って、お
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