を四たび打った。で、彼は時の鐘を聞こうと耳を澄ました。
彼が非常に驚いたことには、重い鐘は六つから七つと続けて打った、七つから八つと続けて打った。そして、正確に十二まで続けて打って、そこでぴたりと止んだ。十二時! 彼が床についた時には二時を過ぎていた。時計が狂っているのだ。機械の中に氷柱が這入り込んだものに違いない。十二時とは!
彼はこの途轍もない時計を訂正しようと、自分の時打ち懐中時計の弾条《ばね》に手を触れた。その急速な小さな鼓動は十二打った、そして停まった。
「何だって」と、スクルージは云った、「全《まる》一日寝過ごして、次の晩の夜更けまで眠っていたなんて、そんな事はある筈がない。だが、何か太陽に異変でも起って、これが午《ひる》の十二時だと云う筈もあるまいて!」
そうだとすれば大変なことなので、彼は寝床から這い出して、探り探り窓の所まで行った。ところが、何も見えないので、已むを得ず寝間着の袖で霜を拭い落した。で、ほん[#「ほん」に傍点]の少し許り見ることが出来た。彼がやっと見分けることの出来たのは、ただまだ非常に霧が深く、耐らないほど寒くて、大騒ぎをしながらあちらこちらと走
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