これは恐ろしい所です。ここを離れたところで、ここで得た教訓は忘れませんよ、それだけは私の云うことを信じて下さい。さあ参りましょう!」
 ところが、精霊はまだじっと一本の指でその頭部を指していた。
「もう解りました」と、スクルージは返辞をした。「私も出来ればそうしたいのですがね。ですが、私にはそれだけの力がないのです、精霊殿。それだけの力がないのです。」
 またもや精霊は彼の方を見ているらしかった。
「この男が死んだために少しでも心を動かされたものがこの都の中にあったら」と、スクルージはもうこの上見てはいられないような気持で云った。「なにとぞその人を私に見せて下さい。精霊殿、お願いで御座います!」
 精霊は一瞬間彼の前にその真黒な衣を翼のように拡げた。そして、それを引いた時には、そこに昼間の部屋が現われた。その部屋には、一人の母親とその子供達とが居た。
 その女は誰かを待っているのであった。それも頻りに物案じ顔に待ち侘びているのであった。と云うのは、彼女が部屋の中を頻りに往ったり来たりして、何か音のする度に吃驚して飛び上がったり、窓から戸外を眺めたり、柱時計を眺めたり、時には針仕事をしよ
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