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目黒には寺々あれど鐘鳴らず
   鐘は鳴らねど秋の日暮るる
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 前にいった瀧泉寺門前の料理屋|角伊勢《かどいせ》の庭内に、例の権八《ごんぱち》小紫《こむらさき》の比翼塚《ひよくづか》が残っていることは、江戸以来あまりにも有名である。近頃はここに花柳界も新しく開けたので、比翼塚に線香を供える者がますます多くなったらしい。さびしい目黒村の古塚の下に、久しく眠っていた恋人らの魂も、このごろの新市内の繁昌には少しく驚かされているかも知れない。
 正覚寺にある政岡の墓地には、比翼塚ほどの参詣人を見ないようであるが、近年その寺内に裲襠《うちかけ》姿の大きい銅像が建立《こんりゅう》されて、人の注意を惹くようになった。云うまでもなく、政岡というのは芝居の仮名《かめい》で、本名は三沢初子である。初子の墓は仙台にもあるが、ここが本当の墳墓であるという。いずれにしても、小紫といい、政岡といい、芝居で有名の女たちの墓地が、さのみ遠からざる所に列んでいるのも、私にはなつかしく思われた。

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草青み目黒は政岡小むらさき
   芝居の女のおくつき所
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