のあいだをどうにか斯《こ》うにか潜りぬけて、夜店の切花屋で梅と寒菊とを買うには買ったが、それを無事に保護して帰るのがすこぶる困難であった。甲の男のかかえて来るチャブ台に突き当るやら、乙の女の提げてくる風呂敷づつみに擦れ合うやら、ようようのことで安田銀行支店の角まで帰り着いて、人通りのやや少ないところで袖の下からかの花を把《と》り出して、電燈のひかりに照らしてみると、寒菊はまず無難であったが、梅は小枝の折れたのもあるばかりか、花も蕾《つぼみ》もかなりに傷められて、梶原源太《かじわらげんた》が「箙《えびら》の梅」という形になっていた。
「こんなことなら、あしたの朝にすればよかった。」
この源太は二度の駆けをする勇気もないので、寒菊の無難をせめてもの幸いに、箙の梅をたずさえて今夜はそのまま帰ってくると、家には中嶋俊雄《なかじまとしお》が来て待っていた。
「渋谷《しぶや》の道玄坂《どうげんざか》辺は大変な繁昌で、どうして、どうして、この辺どころじゃありませんよ。」と、彼は云った。
「なんと云っても、焼けない土地は仕合せだな。」
こう云いながら、わたしは梅と寒菊とを書斎の花瓶にさした。底冷え
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