かりで貼り残しの壁を貼ることにした。幸いに女中が器用なので、まず日本紙で下貼りをして、その上を新聞紙で貼りつめて、さらに壁紙で上貼りをして、これもどうにか斯《こ》うにか見苦しくないようになった。そのあくる日には障子も貼りかえた。
その傍らに、わたしは自分の机や書棚やインクスタンドや原稿紙のたぐいを買いあるいた。妻や女中は火鉢や盥《たらい》やバケツや七輪《しちりん》のたぐいを毎日買いあるいた。これで先ず不完全ながらも文房具や世帯道具がひと通り整うと、今度は冬の近いのに脅《おびや》かされなければならなかった。一枚の冬着さえ持たない我々は、どんな粗末なものでも好《よ》いから寒さを防ぐ準備をしなければならない。夜具の類は出来合いを買って間にあわせることにしたが、一家内の者の羽織や綿入れや襦袢《じゅばん》や、その針仕事に女たちはまた忙がしく追い使われた。
目白に避難の当時、それぞれに見舞いの品を贈ってくれた人もあった。ここに移転してからも、わざわざ祝いに来てくれた人もあった。それらの人々に対して、妻とわたしとが代るがわるに答礼に行かなければならなかった。市内の電車は車台の多数を焼失したので、
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