××さん。
 どこでお聞きになったのか知りませんが、わたしに何か人形の話をしろという御註文でしたが、実のところ、わたしは何も専門的に玩具《おもちゃ》や人形を研究したり蒐集《しゅうしゅう》したりしているわけではないのです。しかし私がおもちゃを好み、ことに人形を可愛がっているのは事実です。
 勿論、人に吹聴《ふいちょう》するような珍しいものもないせいでもありますが、わたしはこれまで自分が人形を可愛がると云うようなことを、あまり吹聴したことはありません。竹田出雲《たけだいずも》は机のうえに人形をならべて浄瑠璃をかいたと伝えられています。イプセンのデスクの傍《わき》にも、熊が踊ったり、猫がオルガンを弾いたりしている人形が控えていたと云います。そんな先例が幾らもあるだけに、わたしも何んだかそれらの大家《たいか》の真似をしているように思われるのも忌《いや》ですから、なるべく人にも吹聴しないようにしていたのですが、書棚などの上にいっぱい列《なら》べてある人形が自然に人の眼について、二、三の雑誌にも玩具の話を書かされたことがあります。しかしそんなわけですから、わたしは単に人形の愛好者というだけの
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