何の注意をも払わなかった。
船が松の青い島々をめぐって行くうちに、同船の森《もり》知事が起《た》って、かの老人たちを紹介した。今日《こんにち》この孔雀丸を浮かべるに就いて、旧藩時代の御座船の船頭を探し求めたが、その多数は既に死に絶えて、僅かに生き残っているのは此の数人に過ぎない。どうか此の人々の口から政宗公以来伝わって来た舟唄の一節《ひとふし》を聴いて貰いたいとのことであった。
素朴の老人たちは袴の膝に手を置いて、粛然と坐っていた。私はこれまでにも多くの人に接した、今後もまた多くの人に接するであろうが、かくの如き敬虔《けいけん》の態度を取る人々はしばしば見られるものではあるまいと思った。わたしも覚えず襟を正しゆうして向き直った。この人々の顔は赭《あか》かった、頭の髪は白かった。いずれも白扇を取り直して、やや伏目になって一斉に歌い始めた。唄は「鎧口説《よろいくど》き」と云うので、藩祖政宗が最も愛賞したものだとか伝えられている。
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※[#歌記号、1−3−28]やら目出たやな。初春の好き日をとしの着長《きせなが》は、えい、小桜をどしとなりにける。
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