ことがある。農であるが、先ずここらでは相当の大家《たいけ》であるらしく、男の雇人が十数人も働いていた。そのなかに二十五、六の若い男があって、やはり他の雇人と同じ服装をして同じように働いているが、その人柄がどこやら他の朋輩《ほうばい》と違っていて、私たちに対しても特に丁寧に挨拶する。私たちのそばへ寄って来て特に親しく話しかけたりする。すべてが人を恋しがるような風が見えて、時には何となく可哀そうなように感じられることがある。早く云えば、継子《ままこ》が他人を慕うというような風である。
 これには何か仔細《しさい》があるかと思って、あるとき他の雇人に訊いてみると、果たして仔細がある。彼はこの家の次男で、本来ならば相当の土地を分配されて、相当の嫁を貰って、立派に一家の旦那様で世を送られる身の上であるが、若気《わかげ》の誤まり――と、他の雇人は云った。――十五、六歳の頃から棒を習った。それまではまだ好《よ》いのであるが、それから更に進んで兵となって、奉天《ほうてん》歩隊に編入された。所詮《しょせん》、両親も兄も許す筈はないから、彼は無断で実家を飛び出して行ったのである。
 それから二、三年の後、
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