ば百五十両、四百両で話がまとまれば、二百五十両、その残りの金はみんなお前さんに差し上げるから、どうか八橋と縁を切ってもらいたい。むかしの次郎左衛門ならば、そんなさもしいことは言わない。千両箱を積んで八橋を請け出して、お前さんの眼の前にも手切れ金の四百両、五百両をならべて見せるが、それが出来ない今の身の上となっては、こんな手前勝手なことを言うよりほかはない。どうか悪しからず思ってくれと、彼は頼むように言った。
 次郎左衛門が自分にむかってこんなことを言い出すのはよくよくのことであろうと、栄之丞は気の毒でもあり、薄気味悪くもなって来た。実をいえば、自分も八橋を次郎左衛門に譲り渡して、その係り合いをぬけたいと考えている折柄であるから、八橋さえ納得すればそうしてもいいと彼は素直に考えた。たとい多少の不満足があるとしても、この場合、彼は眼のまえで次郎左衛門に反抗する力はなかった。
 そこで、彼はこう答えた。
「お話はよく判りました。出来ることやら出来ないことやら確かには判りませんが、身請けの儀は早速相談いたして見ましょう。但しその余分の金は、いかほどであろうとも手前が頂戴いたすわけには参りません
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