《はげ》しいのに治六も驚かされた。なぜ暇をくれると言うのか、それに就いて次郎左衛門はなんにも説明を与えなかったが、かの身請けの一条を八橋が訴えたものに相違ない。主人に恥をかかした――それが勘当の根となったことは、治六にもたやすく想像されたので、彼はいろいろに言い訳をしてあやまった。八橋の身請けのことを口走ったのも決して悪気ではない、つまりは旦那さまのおためを思うがためであったと、彼は泣いて言い訳をした。
「今更ぐずぐず言うな。出て行け」
 次郎左衛門はどうしても取り合わなかった。それでも十両の金をくれて、すぐにここを出て行けと言った。治六も途方に暮れて、帳場へ行って亭主に泣きついた。亭主もおどろいて二階へ行って共どもに口を添えて取りなしたが、次郎左衛門はやはり肯《き》かなかった。
 いったん言い出したらあとへは戻らない主人の気質《きしつ》を呑み込んでいるので、治六もあきらめて階下《した》へ降りた。
「ご亭主さん。いろいろ有難うごぜえました。これもわしの不運で仕方がごぜえませんよ」
「だが、旦那の料簡が判らない。お前さんのことだから、どれほどの悪いことをした訳でもあるまいに、長年《ちょう
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