半月ばかりも顔を見せないので、亭主も内々心配しているところであった。なるほど病気で寝てでもいたらしく、ふだんから髪月代《かみさかやき》などに余り頓着しない男が一層じじむさくなって、少し痩せた頬のあたりにそそけた鬢の毛がこぐらかってぶら下がっていた。
「旦那さまはこの頃どうでごぜえます」と、彼は帳場の前ににじり寄って来てすぐに訊いた。
「相変らずさ」と、亭主はにがい顔をした。「だが、もう大抵遣い切ってしまったらしい。吉原へもだいぶ遠退いたし、この頃では髪結い銭もないらしい」
 次郎左衛門は二月の勘定もまだ払わない。長年の馴染みであるから、勿論あらためて催促もしないが、今まで晦日《みそか》には几帳面《きちょうめん》に払っていた人が僅かばかりの宿賃をとどこおらせているようでは、その懐ろ都合も思いやられる。例の千両もとうとうみんなおはぐろ溝《どぶ》へ投げ込んでしまったらしいと、亭主は気の毒そうに言った。
 治六はじっと俯向いて聴いていたが、やがて肌に着けていた鬱金《うこん》木綿の胴巻から三両の金を振り出して亭主の前にならべた。
「旦那さまの二月分の勘定というのは幾らになるか知りませんが、まあこ
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