妖婆
岡本綺堂

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)諺《ことわざ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)御|奇特《きとく》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)あっ[#「あっ」に傍点]と
−−

     一

「番町の番町知らず」という諺《ことわざ》さえある位であるから、番町の地理を説明するのはむずかしい。江戸時代と東京時代とは町の名称がよほど変っている。それが又、震災後の区劃整理によってさらに変更されるはずであるから、現代の読者に対して江戸時代の番町の説明をするなどは、いたずらに人をまご付かせるに過ぎないことになるかも知れない。
 その理由で、わたしはここで番町という土地の変遷などについて、くだくだしく説明することを避けるつもりであるが、ただこの物語の必要上、今日《こんにち》の一番町は江戸時代の新道五番町(略して新五番町ともいう)と二番町、濠端一番町を含み、上二番町と下二番町は裏二番町通り、麹町谷町北側、表二番町通り南側を含み、五番町は濠端一番町の一部と五番町を合せているのである事だけを断って置きたい。そうして、
次へ
全22ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング