らたち」に傍点]の需用は薄くなったわけである。説教強盗も犬を飼えと教えたが、からたち[#「からたち」に傍点]の垣を作れとはいわなかった。
 わたしは昨日、所用あって目黒の奥まで出かけると、そこにからたち[#「からたち」に傍点]の生垣を見出した。家は古い茅葺家根である。新東京の目黒区となった以上、この茅葺家根も早晩取払われなければなるまい。それと同時に、このからたち[#「からたち」に傍点]の運命もどうなるかと、立ちどまって暫《しば》らく眺めていた。
 家へ帰ると、ある雑誌社から郵書が来ていて、なにか随筆様のものを書けという。そこで、直《す》ぐにこんなことを書いたのである。



底本:「岡本綺堂随筆集」岩波文庫、岩波書店
   2007(平成19)年10月16日第1刷発行
   2008(平成20)年5月23日第4刷発行
底本の親本:「猫やなぎ」岡倉書房
   1934(昭和9)年4月初版発行
入力:川山隆
校正:noriko saito
2008年11月29日作成
青空文庫作成ファイル:
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