薬前薬後
岡本綺堂
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)盂蘭盆《うらぼん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)不眠|勝《がち》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]
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草花と果物
盂蘭盆《うらぼん》の迎い火を焚くという七月十三日のゆう方に、わたしは突然に強い差込みに襲われて仆《たお》れた。急性の胃痙攣《いけいれん》である。医師の応急手当で痙攣の苦痛は比較的に早く救われたが、元来胃腸を害しているというので、それから引きつづいて薬を飲む、粥《かゆ》を啜《すす》る。おなじような養生法を半月以上も繰返して、八月の一日からともかくも病床をぬけ出すことになった。病人に好い時季というのもあるまいが、暑中の病人は一層難儀である。わたしはかなりに疲労してしまった。今でも机にむかって、まだ本当に物を書くほどの気力がない。
病臥《びょうが》中、はじめの一週間ほどは努めて安静を守っていたが、日がだん
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