ーク》ではじめて上場されたのですが、その演出法が和洋折衷で面白くないというので不評であったそうです。今度はその当時とまったく違った俳優たちが純日本式のプロダクションを見せるという、それが観客の人気を呼んだらしいのです。登場者は活動写真の俳優として知られているヘンリー・ウォルサルやフランクリン・ホールの人たちで、それに大学の学生たちが加わっているのです。涎《よだれ》くりその他の寺子を呼出しにくる村の者は、すべて大学生であるということを後に聞きました。
幕があくと、御約束の寺子屋の舞台です。舞台が狭いのでよほど窮屈らしく見えましたが、ともかくも二重家体《にじゅうやたい》を飾って、うしろの出入口には障子が閉めてあります。菅秀才《かんしゅうさい》が上手《かみて》の机にむかって手習いをしている。下手《しもて》に涎くりとほかに三人の子供が机にむかっている。いずれも日本風の鬘《かつら》をかぶって、日本の衣裳を着ています。その衣裳に多少の無理は見えながらも、別におかしいと思うほどのこともありませんでした。
台詞《せりふ》は寺子屋の浄瑠璃の本文を殆《ほとん》ど逐字訳といっても好いくらいに英訳したもの
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