ようなもので、突然に押蒐《おしか》けて行っても入場が出来るかどうだか判らないとのことでした。そうなるとなおなお見たいような気がするので、早々に夕飯を済ませて清原君の来るのを待っていると、清原君は八時頃に誘いに来て、生憎《あいにく》に降って来ましたという。降っても構わないからともかくも連れて行ってくださいと強請《せが》んで、伊坂君と一所《いっしょ》に宿を出ると、冷たい雨がびしょびしょ降っていました。ハリーウードというのは近頃ロスアンゼルスの市に編入された所で、市の中央からはかなりに距《はな》れています。電車で約三十分を費した後に、その劇場の前にゆき着くと、雨に濡れた自動車が路《みち》の両側に長い列を作っています。これではいよいよ入場がむずかしいかも知れないと危《あやぶ》みながら、入口の窓口へ行って訊いてみると、若い女が窓から首を出して、会員以外でも入場させないことはない、しかし今度の劇は十八日から二十四日まで一週間の予定であったのを、切符売切れのために更に三十一日まで一週間の日のべをした位であるから、二十五日以後でなければ入場券を差上げるわけには行かないと、気の毒そうに断るのです。実際我
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