。一夜のうちにこれほどの失敗が重なったのは、彼等に取ってよくよくの悪日《あくび》とも云うべきであった。
しかも不幸は彼等の上ばかりでなく、この事件に重大の関係を有する御賄組の人々の上にも、種々の不幸が打ち続いたのであった。黒沼の婿の幸之助がゆくえ不明になったかと思うと、つづいて瓜生の家でも娘のお北が姿をかくした。幸之助の家出、お北の家出、両家ともに努《つと》めて秘密にしていたのであるが、女中らの口からでも洩れたと見えて、早くも組じゅうに知れ渡ってしまった。
取り分けて、人々をおどろかしたのは、黒沼の娘お勝の死であった。前にも云う通り、お勝は先月以来引きつづいて病床に横たわっていて、急養子の幸之助とは名ばかりの夫婦であったが、その幸之助が家出すると又その跡を追うように隣家のお北が家出したことを知った時に、お勝は枕をつかんで泣いた。
「口惜《くや》しい」
そのひと言に深い意味のこもっていることは、母のお富にもよく察せられたが、まだ確かな証拠を握ったわけでもないので、表立って瓜生へ掛け合いにも行かれず、さしあたりいい加減に娘をなだめて置くと、お勝は母や女中の隙をみて、床の上に起き直って
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