めて会釈した。
「甚だ勝手でござりますが、実は二、三日前から風邪で引き籠って居りますので、わたくしはこれで御免を蒙ります。どうぞゆるゆると御休息を……」
「御病ちゅう御迷惑をかけて恐れ入ります、御遠慮なくお休みください」
たがいに挨拶して、住職は納所と共に立ちあがった。そのうしろ姿を見送りながら、吉五郎は何か思案していると、今まで無言でころがっていた留吉は自由にならない体を少しく起こして、小声で話しかけた。
「親分、あの和尚《おしょう》は怪しゅうござんすね」
「おめえも見たか」
「さっきから寝ころびながら、あいつの顔色をうかがっていたんですが、あの和尚、なにか因縁《いんねん》がありそうですぜ」
「おれの思う壺にだんだん嵌《はま》って来る」と、吉五郎はほほえんだ。「全くあの和尚は唯の鼠じゃあねえ」
足音がきこえたので、ふたりは急に口をつぐむと、納所が医者を案内して来た。
九
岡っ引の吉五郎と、その子分の留吉は着々失敗して先ず第一に目的の白い蝶を見うしない、次にお冬を取り逃がし、次に火の番の藤助を取り逃がし、更に覆面の曲者を取り逃がし、最後に留吉は墓場でころんで負傷した
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