ろから四つ折りの鼻紙を取り出して、蝶を目がけてはた[#「はた」に傍点]と打つと、白い影はそのまま消え失せてしまった。
「たしかに手応《てごた》えはあったのだが……」と、吉五郎はそこらを透かして見まわしたが、提灯を持たない彼は、暗い地上に何物をも見いだすことが出来なかった。
「そこらへ行って蝋燭を買って来ましょう」と、留吉は土地の勝手を知っていると見えて、すぐにまた駈け出した。
寺門前には小さい商人店《あきんどみせ》が五、六軒ならんでいる。表の戸はもう卸《おろ》してあったが、戸のあいだから灯のひかりが洩れているので、留吉はその一軒の荒物屋の戸を叩いて蝋燭を買った。裸蝋燭では風に吹き消される虞《おそ》れがあるので、小さい提灯を借りて来た。
その提灯のひかりを頼りに、ふたりはそこらの地面を照らして見たが、蝶らしい物の白い影はどこにも見あたらなかった。吉五郎は舌打ちした。
「仕様がねえ。風が強いので吹き飛ばされたかな。まさかに消えてなくなった訳でもあるめえ」
と云う時に、留吉は声をあげた。
「や、飛んでいる。あすこに……」
白い蝶は、三、四間|距《はな》れた所に飛んでいるのである。それ
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