中、役向きのことに就いて何かの不正事件があったらしい。貧乏旗本の彼が内福になったと云うのも、その間の消息を語っている。お近はその秘密を掴んでいるので、佐藤の屋敷内では思うがままに振舞っていたらしい。今度の事件に関連して、その不正が発覚《はっかく》するのを恐れて、佐藤は自滅したのではないかと察せられた。
 火の番の藤助は再び行くえ不明となった。彼を召捕ったならば、事件の真相が更に明瞭になるだろうと、吉五郎らもさまざまに手をまわして探索したが、遂になんの手がかりも無かった。それから三月ほどの後に、八王子の山のなかで彼に似たような縊死者を発見したが、死体はもう腐爛しているので、その人相もはっきりとは判らなかった。八王子は藤助の故郷であるが、どこへも尋ねて行ったという噂はきこえなかった。あるいは何かの係り合いになるのを嫌って、どこでも口を閉じていたのかも知れない。

 この事件の探索に主として働いた岡っ引の吉五郎は、わたしが「半七捕物帳」でしばしば紹介した彼《か》の半七老人の養父である。



底本:「時代推理小説 半七捕物帳(六)」光文社文庫、光文社
   1986(昭和61)年12月20日
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