殺されたか、わが寺門前の出来事ながら自分は一向に知らないと祐道は云った。しかし大かたは藤助親子の仕業《しわざ》で、何かの毒薬を塗った針のような物で刺されたのであろうと彼は説明した。いずれにしても、自分の寺内の墓地を根城《ねじろ》にして、世間をさわがすような事を繰り返すのは甚だ迷惑であるので、祐道はお近らに対して幾たびか意見を加えたが、彼等は一向に肯《き》かなかった。そのうちに、白い蝶の噂がいよいよ高くなって、町方からも探索の手が廻ったらしいので、祐道の心はますます苦しめられた。お近と幸之助が藤助の家から帰る途中で、町方らしい者に追われて危く逃《の》がれたなどという噂を聴くたびに、彼も毒針で胸を刺されるように感じた。
 町方に追われて以来、気の弱い幸之助は自分の屋敷へ帰られなくなって、佐藤の屋敷に身を隠すことになったが、それを機会にお近はさらに一策を案出して、自分の恋がたきのお北を誘い出した。その使を頼まれたのは例の藤助で、彼は幸之助が佐藤の屋敷に忍んでいることをお北に告げて、本人もあなたに一度逢いたいと云っているから是非来てくれと巧みに欺いて連れ出したのである。連れ出されてお北はうかう
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