から、ゆうべから方々をうろ付いていました」
「お前はゆうべ、わたしを姉さんのところへ連れて行ってやると云ったが、本当か」
お冬はだまった。
「嘘か」と、長三郎は詰《なじ》るように云った。
「連れて行くと云ったのは嘘ですけれど……。お姉さんの居る所は知っています」
「知っているなら教えてくれ」
お冬は男の顔を見つめながら黙っていた。
「おまえは当ても無しにここらへ来たのか」と、長三郎は訊いた。
「もし自分のからだが危くなったら向島へ行けと、お父《とっ》さんに云い聞かされているので……」
「向島の……なんという所へ行くのだ」
「五兵衛という植木屋の家《うち》です」
「そこに姉さんも幸之助もいるのか」
お冬は答えなかった。
「そうして、その五兵衛の家は知れたのか」
「ここらへは滅多に来たことが無いので、路に迷って四つ木の方へ行ってしまって、お午《ひる》頃にここまで引っ返して来ましたが、くたびれたのと眠いのとで、さっきから此の小屋へはいって寝ていました」
「では、その家は見付からないのか」と、長三郎は失望したように云った。
「これからあなたと一緒に探しましょう」と、お冬はその野生を発揮し
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