は相手の顔をみあげた。
「春の日が長いと云っても、綾瀬まで往復しては、どうしても暗くなるだろう」
「暗くなるのは構いませんが、行っても無駄でしょうか」と、長三郎は念を押した。
「無駄らしいな」
「では、あなたは姉の居どころを御存じなのですか」
「いや、知らない。わたしは知らない」と、理右衛門は迷惑そうに答えた。「だが、こんな遠方へは来ていそうもない。燈台|下暗《もとくら》しと世のたとえにも云う通り、尋ね物というものは案外手近にいるものだ」
その口ぶりが何かの秘密を知っているらしいので、長三郎の胸はおどった。彼はあまえるように理右衛門に訊いた。
「あなたは御存じなのでしょう。どうぞ教えてください。幸之助はともかくも、姉の居どころだけを教えて下さい。お願いです」
「いや、知らない。まったく知らない」と、理右衛門はいよいよ迷惑そうに云った。「わたしはただ燈台下暗しという世のたとえを云ったまでだ。ともかくもここまで踏み出して来たのだから、無駄と思って綾瀬まで行ってみるのもいいかも知れない。綾瀬へはこれから真っ直ぐだ。わたしはこれから右へ切れるから、ここで別れるとしよう」
理右衛門は俄かに右
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