酌でむやみに飲みはじめた。
 相手が思う壺にはまって来たらしいのを見て、吉五郎はいよいよ沈黙をつづけていると、鉄造も黙って飲んでいた。代りの徳利が三、四本も列べられた。
「どういうものか、きょうは酔わねえ」と、鉄造はひとり言のように云いながら、吉五郎の顔を見た。
 吉五郎はじろりと見返ったが、やはり黙っていた。鉄造も黙って又飲んでいたが、やがて再び口を切った。
「おめえはもう飲まねえのか」
 吉五郎は答えなかった。鉄造も黙って又飲んだが、やがて更に云い出した。
「おい、おれ一人で飲んでいちゃあ、なんだか寂しくっていけねえ。おめえも飲まねえかよ」
 吉五郎はやはり答えなかった。鉄造も黙って手酌で又飲んだが、徳利や猪口《ちょこ》を持つ手が次第にふるえ出した。彼は訴えるように云った。
「おい。なんとか返事をしてくれねえかよ。寂しくっていけねえ」
 吉五郎は再びじろりと見返ったままで答えなかった。鉄造は彼自身も云う通り、きょうは全く酔わないのであろう、むしろ反対にその顔はいよいよ蒼ざめて来た。泣くように又訴えた。
「おい。おめえはなぜ黙っているんだよ」
「そりゃあこっちで云うことだ」と、吉五郎
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