が又、不思議な廻《めぐ》り合わせで、近所の御賄屋敷へ養子に来るようになった。女房になる筈のお勝という娘は病気で、直ぐには婚礼も出来ねえそのうちに、隣りの娘と出来合ってしまった。それがお近さんに知れたので、やきもち喧嘩で大騒ぎだ。まあ、それまではいいとしても、それが為に幸之助は身を隠す、お勝という娘は自害する、お北という娘は身を投げる、お近さんは殺される。これほどの騒動が出来《しゅったい》しちゃあ、唯済むわけのものじゃあねえ。積もってみても知れたことだ。お気の毒だが、おめえの主人も係り合いで、なにかの迷惑は逃《の》がれめえと思う。そんな屋敷に長居をすりゃあ、おめえ達もどんな巻き添えを喰わねえとも限らねえ。まあそうじゃあねえか」
 鉄造は息を呑むように黙っていた。
「そればかりじゃあねえ。このごろ世間を騒がしている、白い蝶々の種もすっかり挙がっているんだ。火の番の娘のお冬という奴が、菅糸を付けて飛ばしているに相違ねえ」
「おめえはどうしてそんなことを云うんだ」と、鉄造はあわてたように訊き返した。
「そのくらいの事を知らねえようじゃあ、上《かみ》の御用は勤まらねえ」と、吉五郎はあざ笑った。「
前へ 次へ
全165ページ中136ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング