持って行っただけのことで、ほかに仔細があるに相違ねえ。下屋敷は小人数だから、どうもよく判らねえのだが、女中たちの話によると、なんでも五、六日前に隠居と妾とが喧嘩をした事があるそうだ。その時は隠居もかなり激しく怒った様子で、お亀も蒼い顔をしていたというから、その喧嘩がもとでこんな事になったらしいが、どんな喧嘩をしたのか誰も知らねえから見当《けんとう》が付かねえ。なにしろちっとも手がかりがねえので、おれ達ももう諦めてしまった頃へ、この頃になってふと聞き込んだのは、お亀によく肖《に》た女を音羽辺で見かけた者があると云うのだ。そこで、留に云いつけて、この音羽から雑司ヶ谷の辺を探索させると、あいつもさすがに馬鹿じゃあねえ、それからそれへと手をのばして、とうとう其の佐藤の屋敷に忍んでいることを突き留めたのだが、さっきも云う通り、旗本屋敷に巣を食っているので、迂闊に手入れをすることが出来ねえ。しかし斯《こ》うなりゃあ生洲《いけす》の魚《うお》だ。遅かれ早かれ、こっちの物よ」
 吉五郎は冷えた猪口《ちょこ》を飲みほして、自信があるように微笑《ほほえ》んでいると、兼松もおなじく得意らしく笑った。
「まっ
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