十五両ばかりの金を取ったのから足が付いて、ゆうべ板橋の女郎屋で挙げられたそうです。路用が出来たらすぐに伸《の》してしまえばいいものを、娑婆《しゃば》へ出ると遊びたくなる。やっぱり運の尽きですね」と、松吉は笑っていた。
「ほかの奴らのゆくえは知れねえのか」
「二人の申し立てによると、六人は牢屋敷の外へ出ると、すぐにばらばらになってしまったので、誰がどっちへ行ったか知らねえと云うのです。惣吉と松之助だけがひと組になって、本郷から板橋の方向へ行ったのだそうで……。旦那方もずいぶん厳重に調べたようですが、二人はまったく知らねえらしいのです」
「それじゃあ、ちっとも手がかり無しか」と、半七は溜め息をついた。
「そうですよ」と、松吉はうなずいた。「残る四人のうちで、兼吉と勝五郎はどうしたか判らねえが、藤吉と金蔵は牢内にいる時から仲が好かったから、この二人は繋がっているかも知れねえと云うことです。松之助の申し立てによると、金蔵はこんなことを云っていたそうです。おれは江戸に恨みのある奴があるから、そいつに意趣返しをした上でなけりゃあ高飛びは出来ねえと……」
「意趣返しをする」
「それがね、親分」と、松
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