覚で、とうとう運の尽きになりました」
「茂兵衛と銀八はすぐに召し捕られましたか」
「召し捕りました。庄太はまだ帰って来ず、わたくし一人では手に余るかと思ったのですが、うかうかしていて高飛びをされると困るので、まあどうにかなるだろうと、多寡をくくって、わたくし一人でむかいました。夜の商売でありませんから、下総屋はもう大戸をおろして、潜《くぐ》り戸の障子に灯のかげが映《さ》しているので、わたくしは藤助を指図して、外から唯今と声をかけさせました。冥途の道連れにされた筈の藤助が、無事に帰って来たので、内でもおどろいたのでしょう。銀八がすぐに潜り戸をあけて表を覗く。そこへわたくしが飛び込んで、有無《うむ》を云わさずに縄をかけてしまいました。
 その物音を聞きつけて、奥から亭主の茂兵衛が出て来ましたから、これもすぐに押さえました。相手が二人ですから、一度に召し捕るのはむずかしいと思っていましたら、都合好く順々に出て来たので、案外にばたばたと片付きました。案じるよりは産むが易いとは此の事です」
 最後に残ったのは女二人の始末である。それについて、老人は少しく顔をしかめた。
「おさんとお種が銀八に引き
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