ぞも大工の考えそうなことで、長い釘を一本打ち込むのでも、素人では手際《てぎわ》よく行かないものです。
頭へ釘を打ち込まれたら即死の筈です。そのお半が長助に武者振り付いたというのは、ちっと理窟に合わないようですが、長助は確かにむしり付かれたと云っていました。この長助は職人のくせに、案外に気の弱い奴ですから、内心怖いと思っていたので、死骸が自分の方へでも倒れかかって来たのを、むしり付かれたと思ったのかも知れません。
わたくしが掃部宿《かもんじゅく》へたずねて行った時に、長助がなんだかびくびくしているのは変だと思いましたら、案の通り、浅草の観世物小屋へ因縁を付けに行って、幾らか貰って来たんです。お半にむしり付かれた時には、長助は半分夢中だったのですが、それでも幾らかは周囲の様子をおぼえている。その話によると、お半の倒れていたあたりには、人間の化け物が忍んでいたらしい。考えようによっては、その化け物がお半を殺したかとも疑われるんですが、わたくしは最初の見込み通り、どこまでも信次郎に眼をつけて、とうとう最後まで漕ぎ着けました。わたくし共の商売の道から云えば、これらはまぐれあたりかも知れません
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