った。隣りの竹倉という船宿で訊くと、お信の死骸は検視が済むや否や、すぐに下谷|稲荷町《いなりちょう》の女房の里方へ運んで、今夜はそこで内々の通夜《つや》をするらしく、三河屋の家内はみな下谷へ出て行って、亭主の清吉ひとりが留守番をしているとの事であった。
半七は再び三河屋の店さきに立って声をかけると、奥から亭主が出て来た。清吉はもう四十以上の頑丈そうな男で、半七を見て、仔細らしく顔をしかめたが、又すぐに打ち解けて挨拶した。
「親分でございましたか。まあ、どうぞこちらへ……」
「どうも悪いことが続いて、お気の毒だね」と、半七は店さきに腰をおろした。「そこで清吉。今夜は御用で来たのだから、そのつもりで返事をしてくれ」
清吉は形をあらためて、無言でうなずいた。
「早速だが、おめえに訊きてえことがある。姪のお信は先月の一件以来、小ひと月のあいだ何処に忍んでいたのだね」
「存じません」と、清吉ははっきり[#「はっきり」に傍点]と答えた。「実は何処から出て来たのかと、わたくしも不思議に思っている位でございます。小ひと月も便りがありませんので、死骸は遠い沖へ流されてしまって、もう此の世にはいないも
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